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Author:チューリップバスケット
お花との想い出を綴っていきたいと思います...

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期限つきの恋 No1
その男と話すと、誰もが彼の世界に引き込まれる、そんな男だった。
博識で、世間の情報が全て彼の元に向こうから集まってくるのではないかと思うくらい、よく物事を知っていた。そして、使う言葉を相手に合わせることを忘れず、まるでクリームのように会話を滑らかにする技術にも長けていた。聞き役でいるだけで、私自身が知的で立派な人間になっていくような気になった。

「ここ よろしいでしょうか。」見知らぬ男が声をかけてきた。
「どうぞ。」歳は40後半くらいだろうか。
スーツに隠している体は、太りすぎも痩せすぎもせず、上品さを香らせていた。何よりも、鼻筋がスーッと通った涼しい目元の端正な顔立ちが人目を引いた。
「今日は花冷えですね。」
「ええ、そうですね。」
「今にも季節外れの雪が降りそうなくらいですね。」
それが時雄とはじめて交わした言葉だった。

私は5歳年下の男と別れたばかりだった。彼は自由で我がまま、気の向いたときだけ私のアパートに転がり込み、後は好き勝手し放題。
「玲美はクールだよね。でもそこが好きなんだけどさ。」
鼻にかかった甘い声は私を刺激するが、一方で、深入りしないように距離を置いていた。そう..私は駿の前ではクールだった。
それが年下と付き合うルールだから。いつ彼が来てもいいように、何が起きても動揺しないように、心の準備は常に怠らなかった。考えてみると、年下だからというよりも、私はいつも準備をする人間だった。付き合い始めると必ず、別れのシーンを想像する。
「玲美、大事な話しがある。他に好きな人ができた。もちろん玲美も好きだけど...。」
別れを切り出された時も、さしずめ驚きはしなかった。ただ、すぐに承諾するのもおかしいし、泣くなんてもってのほか。しばらく時間を置いてから
「..幸せにね。でも何かあったら、メール頂戴ね。いつでも駿の相談に乗るよ。」そんな言葉をかけて、猫のような彼とは別れた。しかし、それっきり彼から連絡がくることは無かった。
「そんなもんよね。」

5月に入ると長かった北海道の冬にもやっと春が訪れる。今日は少し肌寒いが大通り公園のベンチで1人、お弁当を食べることにした。別れた男のせいか、あまり食欲もなく、寄って来るハトに玉子焼きを少し分けてあげた。大通り公園のハトは何でも良く食べる。甘く焼いた玉子焼きは駿の好物で、彼のお弁当には必須なおかずだった。
「玉子焼き、作ってもらってるかな...。」
別れた男を想うなんて未練がましい自分ではいたくないし、いつかこんな日がくると、いつでも準備していたはずだ。
そんな時に声をかけてきたのが時雄であった。

あの空のようにどんよりと曇っていた顔だから、声をかけてきたのだろう。私はすかさず左手の薬指に目を向ける。呪縛の印がキラリと光っていた。初めて会う男は必ず左手を観察する。結婚しているからどう、独身だからどうという事ではなく一種の癖のようなものだ。いや、もしかすると、今後の展開のあらゆる可能性に対応する為、相手の環境確認を無意識のうちにしており、それが習慣化されているのかもしれない。
2人並んでベンチに座っていると、どういう関係に見えるだろうか。
上司と部下、恋人同士。笑うと少し下がる目尻が、整いすぎて冷たく見える彼の顔を優しくさせる。

極々まれだがこの時期でも、なごり雪がちらつくことがある。雪が降りそうだと言った時雄の言葉に
「やっと咲いたライラックも寒そうですね。」そう答えた。
「良かった。君があまりにも淋しそうな顔をしてるもんで、つい声をかけてしまった。でもリラの様子がわかるのであれば、大丈夫だね。私は出張で東京から1ヶ月程こちらに来ているんです。右も左もわからない札幌で、年甲斐もなく心細くなって、こうして外に出てみたら君がうつむいていて。」
ライラックという呼び名は北海道だけの呼び名で、一般的にはリラと呼ばれている。
時雄は、すぐに言葉につまって会話がつまらない私とは違い、次から次へと言葉が流れ出る。といっても、無差別に乱れ打つ機関銃のようではなく、相手を包み込むように話をする。会話で相手を夢中にさせるとは、こういうことを言うのだろうか。発せられる言葉の一つ一つが、私の心の奥に沁みこんでいくのが、手に取るようにわかった。駿と別れたばかりの乾いた私には、特に浸透し易かったのかもしれない。

時雄の甘くとろけるようないたわりの言葉に、思いがけず涙がこぼれてしまった。彼はたまたま見つけた沈んだ顔の女に、単身である自分の不安を重ねただけであろう。まさか泣かれるとは思ってもみなかっただろうから、きっと困惑した表情であったに違いない。一筋の涙は、クールな私に似合わぬ、純真な少女が流す真珠のような雫だった。

5月の風が2人を通りすぎると魅惑の香りを漂わせて、ライラックがさわさわと騒ぎ出した。

時雄という男は、思ったことを率直に言葉にする男である。不幸顔の女が公園のベンチに1人で座っているのを見て、いてもたってもいられなかったのだろう。そのまま見過ごす事は、この男のポリシーに反する事であったのだと思う。
おそらく、淋しそうな女を見ると同じように声をかけて、相手がその気になれば、付き合うに違いない。淀みなく流れる言葉は、数え切れない女たちを通り過ぎてゆく。私もそのうちの1人だろう。

しかし私は、時雄に出逢えて自分の中の素直な感情に向き合えるようになれた。泣きたいときには泣き、怒りたいときには怒る。時雄ほど巧みな言葉で表現することはできないが、語彙不足で幼稚ながらも自分の気持ちを素直に言えるようになった。それは私にとって大きな変化である。おそらく1ヶ月後の別れのときは、人目もはばからずに泣くだろう。

彼に出逢えて良かったと思う。

たとえ期限つきの恋であっても。



ショートストーリー】
とある昼下がり、公園のベンチに座る男女を見かけました。
2人の距離は近すぎず遠すぎず。
得々と話す男性の話を、にこやかに聞いている女性。
女性をちょっぴり辛口に仕立て上げ、思いつくまま勝手に作ってみました(笑)

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました
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2010.05.02(Sun) | 短編物語のお話し | cm(12) | tb(0) |

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この記事へのコメント
1081. No title
なんとなんと、一気に読んでしまいましたぞ。
短編小説もチャレンジとは…やりますなあ
拍手ですぞ

ところで、ハートのサボテンは、時雄のプレゼントでは??
それとも過ぎ去って行った彼が残したものかな
リラの花束を君に託し、香りだけ残して去っていったのかな…。
色々心騒ぎまする。

花の召使い | 2010.05.02 00:33 | edit
1082. Re:花の召使いさんへ
コメントありがとうございます。
初めての挑戦でした(照)

『ハートのサボテンは、時雄のプレゼントでは?? 』
そうです!よくぞ気づいてくださいました。
時雄から玲美へのお別れの時のプレゼントです。
「乾いた頃に、またお水をもらいにやってきます」
そんなメッセージがついていました。

チューリップバスケット | 2010.05.02 01:28 | edit
1083. ドキドキ…
引き込まれて読ませて貰いました!
胸の鼓動が長くおさまりませんでした。
“期限付の恋”は軽いものなら…私はしょっちゅう
得意の妄想でしているかな…(*^-')b
相手に本当の自分を見せられず別れ…直後に誰かに優しくされたら
フワッと包み込まれたいと思うものよねぇ。。。

いやあ~すごいね~チューリップバスケットさん!又書いてね~~☆
香奈子 | 2010.05.02 09:08 | edit
1084. 物語りは続く
なんとも意味深な物語りですねえ
レイミ?はチューリップバスケットさんの化身なのかも?
通り過ぎていく男と分かっていても、尚引かれていく化身
不思議なことはそんな男と出会って変わってゆく自分が見えていること
男は本人さえ気づかぬ内的部分を、優しく引き出してくれたのですね
知らない自分に気付かせてくれて化身はきっと驚いたことでしょう
知らない自分を発掘してくれる男
彼との共有する時間の中では自由奔放になれる自分
彼との時間は流れ星のよう
キラリと光り、一瞬に流れていく
そんな男はもう外にはいないかもね

でも一ヶ月の期限付きの恋
彼の名は時雄
過ぎてゆく時間の数程、過ぎ去って行った彼女達
何故だと思う?
それはね
時雄の心の中に入り込み魂に触れた女性がいなかったから
それと彼の心は『本物』に飢えているのだと思う
『本物の愛』『本物の真心』だよ
もう上辺だけの恋には飽き飽きしてるんよ
この一ヶ月で
そのことに気付かせてあげれば
彼は間違いなく変わるでしょう
彼の魂を揺さぶるのです

身も心も虜にしてしまう男
自分の内なる部分を見出だしてくれる男
でも浮気な彼

浮気な彼の本性は
上滑りの自分に気付かず、枯渇し求める『本当のこと』を知らなかったからなのです
彼もまた自分のことを知らなかったのです
さあどうしますか…

物語りは続く だね
(o^~^o)νチャンチャン
チャン | 2010.05.02 11:07 | edit
1085.
月まではライラックの薫りは届かねど
新たなチャレンジに
せめて拍手だけは5連拍しておきましたよ

遠くから眺めていると
お互い思い込んで
この人はこんな人
私はこんな人
枠にはまってしまっている自分に気付かない
相手もそんな人だと思い込んでいる
そんな気がする今日月ごろ

素敵なお月様でも眺めながら
心の深奥を月光に照らしてみませんか
知らない自分がいるかもね
月よりの使者Jr | 2010.05.02 11:48 | edit
1086. ?
ライラックの 香りに酔い?
青春の思い出が 甦ったのかと?思いましたが?

赤毛のアンに・・・なったのですね(笑)

我が家のライラック もう少しで 匂い出します
ナニか 思い出せるかな?
冬山 枯木 | 2010.05.02 15:16 | edit
1087. Re:香奈子さんへ
読んでいただいてありがとう♪
ちょっと照れくさかったけれど、UPしてみました!
やっぱり北海道を題材にしたお話しになってしまいますね(笑)
遅い春がやってくると、一気にいろんな事がしたくなり、行動的になります!
新たな分野に挑戦でした~。
香奈子さんのブログコメントに長々と入れた(迷惑~笑)「優しい魔女」のお話しに継ぐ第2弾です。
もしも、また作った時は、読んでくださいね!

チューリップバスケット | 2010.05.02 17:45 | edit
1088. Re:チャンさんへ
改行をたくさんしたかったのですが、激しく縦長になると思い、改行をあまりしませんでした。読みにくかったと思いますが、最後まで読んでいただいてありがとうございます!
しかも、続きを連想させるようなコメント、嬉しいです!
「その女は名前を玲美といい、リラの薄紫色が良く似合う女である..。」な~んて、時雄の視点からの物語が続きそうです(笑)
チャンさんにかかれば、浮気な時雄も愛すべき人間になりますね!

『レイミ?はチューリップバスケットさんの化身なのかも?』
笑笑笑 玲美のようにモテモテになってみたいものです(笑)
チューリップバスケット | 2010.05.02 18:03 | edit
1089. Re:月よりの使者Jrさんへ
パチパチありがとうございます。
『枠にはまってしまっている自分に気付かない 。相手もそんな人だと思い込んでいる 。そんな気がする今日月ごろ』
今日月ごろですか~(笑)
人というものは、多面性を持っているものですよね。
表の顔の枠にはめ、自分の深層心理に気づかず過ごしている事も..。
心の奥底を月光に照らしたら、案外驚くことばかりかもしれませんね。
一途だと思っていたけれど、実はふらふら浮気性だったり、浮気性だと思っていたら、意外に一途だったり。でも、浮気性だと思っていたら、やっぱり浮気性だった!なんて人は、そのままなので、月光は必要ないですね(笑)
チューリップバスケット | 2010.05.02 19:54 | edit
1090. Re:冬山枯木さんへ
コメントありがとうございます。
ライラックの香りは、きっと素敵な想い出に冬山さんを導いてくれるでしょう。
でも、冬山さんの想い出はたくさんありすぎて、ライラックも困ってしまうかも(笑)

今年のライラックはお天気のせいか、やはり開花が遅く、5月中旬の「ライラック祭り」の関係者はヤキモキしているようです。
「じらし」は自然の女神が1番お上手のようですね。
見事にじらされた私は、想像で花香を感じ、一足お先に物語を作ってしまいました(笑)
チューリップバスケット | 2010.05.02 20:03 | edit
1091. やられたぁ~
ヤバイ!スゴイ!!!私も一気に読ませていただきましたよ~。
ツボを突かれた感じで、ちょっと、ほろっと、きちゃいました。冗談抜きで。

笑うと少し下がる目尻

いいですねぇ~~~、この感じ。
私も妄想が始りそうです(笑)

気持ちに素直に向き合う。
大事ですね。
今、私には、
泣きたくても「泣いてる場合じゃない、泣くのは今じゃない」
という強い意志が出てきてしまうので、、
いつ、泣かないブロックをはずせるのか、自分でもわかりません。

ストーリーのつづき、待ってまーす。なんちゃって。
プレッシャーをかけたりして。
いやでもほんとに、文章のリズムというか、とても読みやすかったです。



kotoha | 2010.05.03 00:04 | edit
1092. Re:kotohaさんへ
ヤバイですか?笑笑笑
文字がびっちりで、読みにくかっったと思いますが、ありがとうございます!
『笑うと少し下がる目尻』
ほんの些細なしぐさや何気ない表情に、心がくすぐられる時ってありますよね。

『泣いてる場合じゃない、泣くのは今じゃない』
大人になったら泣いちゃいけないと教わったけれど、泣いて泣いて傷ついた時、人はホントの悲しみを知るのかもしれませんね。そしてそこから立ち上がると、1つ成長した自分に会えるのでしょう!

え!?続きですかぁ~(笑)うふふ♪
チューリップバスケット | 2010.05.03 11:27 | edit
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